ある日の午前
ぽてこは自分のデスクで一生懸命に仕事をしていました。その時、別部署の先輩である小林美穂が彼女のデスクにやってきました。
小林:「ぽてこ、お願いしていた新機能開発プロジェクトのプレゼンの進捗はどう?」
ぽてこ:「はい、小林さん。1週間ほどいただきましたが、今日中にはプレゼン資料の作成が終わる予定です!」
小林:「OK!さすが優秀ね!ちなみに、プレゼン資料の作者には忘れずに私を入れておいてね。」
ぽてこ:「えっ、小林さん、確かに最初に構想は一緒に考えましたが、プレゼン資料は企画から文案まで全て私でやったと思うので、作者は私に…」
小林:「私たちはチームとして働いているんだし、ぽてこだけでやってるって言うのは印象が悪いよ?それに、構想を考えないと、プレゼン資料はできなかったでしょ?そこで私を入れてくれないのは変よ。仕事の上では、正確に誰が何をしたかを報告するべきよ。」
ぽてこ:(正確に言って構想は二人、プレゼンの作成は私だと思うんですけど…)
ある日の午後
ぽてこはトモヤたちと一緒に社内のカフェテリアでランチを取っていました。
ぽてこ:「トモさん、嘘をついて成果を横取りしたことあります?」
トモヤ:「そんなことやっちゃダメだよ。もちろんやったことないよ。どうしたの、ぽてこ?」
ぽてこ:「とある先輩が私がやった仕事の成果を取ろうとしているように感じて…。気まずくなるから、とある先輩の要請を断れずにいまして。どういう心理でそういうことをするんだろうって。それで…」
かくかくしかじか
トモヤ:「嫌なことに巻き込まれているね。本人でなければ正しく分析はできないけど、ひとつの切り口としてカール・ロジャーズの自己一致という考え方は参考になるかも。アメリカの臨床心理学者の考え方だ。」
ぽてこ:「自己一致?それはどういうことですか?」
トモヤ:「ロジャーズは、カウンセラーに必要な基本姿勢には、受容・共感・自己一致の3つがあると言っている。その自己一致とは、「理想の自分」と「実際の自分の振る舞い」が一致している事を言うんだ。ちなみに英語では少し難しく英語でCongruenceという。「理想の自分」と「実際の自分の振る舞い」の間に大きなギャップがあると、人は不一致の状態に陥り、自己を肯定するために不適切な行動をとることがあるんだ。ただ、自己不一致の場合は自己否定感が強い傾向があると言われてもいて、その先輩はそうではないようだが、この点はあくまでも傾向性だからね。」
ぽてこ:「それが嘘や成果の奪い取りにどうつながるんです?」
トモヤ:「つまり、君の先輩の行動は、彼または彼女自身のギャップを示しているのかもしれない。彼女は自分が理想の自分になれていないこと認識したがために、自己の価値を認めるために不適切な行動、つまり嘘や成果の奪い取りをしようとしているのかもしれない。」
ぽてこ:「それなら、どう向き合っていけばいいんですか?」
トモヤ:「まず、先輩の行動を理解することが大切だ。理想像と実際のギャップが聞けると一番わかりやすいが、聞けずとも、理解しようと考えてあげよう。可能性として、ぽてこと共同でやった構想段階で思ったより活躍できなかったとか、何か上司からプレッシャーをかけられているとかね。」
ぽてこ:「なるほど。それでも嘘や成果横取りを許せる気持ちには到底なれないですが、先輩もいろいろ挟まれて大変なのかなと思えば少し自分の心に余裕ができるかもしれないです。」
トモヤ:「そこが一番大事だ。まずは自分が冷静になること。その生まれた心の余裕から、問題となる相手にどう対処するかを考えるのが本番だよ。これは何度も繰り返し言うが、知識や論説は即効性を期待するものではないから。長期的な視点を持って実践する事が効果を生むよ。」
トモヤ:「短期的に同調せざるを得ない事はあるかもしれないが、嘘や成果横取りを容認することは、共犯意識が発生したり、被害意識の麻痺を生じさせる。お互いに負のアクションを助長することになるぞ。ぽてこにとってもとても良くないんだ。なるべく早くに芽をつむことは考えるようにね。」
ぽてこ:「そ、そ、そうか。私がモクモクと頑張っている、我慢しているだけでいいという話ではないのですね。」
トモヤ:「大丈夫、ぽてこ。君ならできるさ。何か問題があったら、いつでも相談してね。」
解説:カール・ロジャーズの自己理論
カール・ロジャーズは20世紀のアメリカの臨床心理学者で、人間性心理学派の一員として知られています。彼の自己理論は、自己と理想自己のギャップが人間の行動にどのように影響するかを説明します。自己(経験自己)とは、有機体としての実際の体験を指し、自己概念(理想自己)とは、その経験から自己として抽象化・概念化された部分を指します。ロジャーズは、自己と理想自己の間に大きなギャップがあると、人は不一致の状態に陥り、自己を肯定するために不適切な行動をとることがあります。この理論は、自己啓発の一環として、また困難な状況に立ち向かうための戦略を提案する際に参考にされます。

30代半ばのサラリーマンです!入社早々から4-5年は、周囲の上司や先輩に酷く追い詰められた経験あり。早朝深夜残業サービス当たり前。今ではそんなしょうもない類の人達を努力で出し抜いて成績優秀者として報奨を得たり役職者になる事ができました。自由に、楽しく、家族第一、それでも活躍できるサラリーマンを日々目指しています。苦しみ悩む社会人を応援するためにブログ発信を決意。
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