【人材入れ替え】働きアリの法則に惑わされない組織変革

コミュニケーション

「働きアリの法則」「2:6:2の法則」という言葉をよく耳にすると思う。この法則は、要するに「組織の中で、一生懸命働く人の割合は2割、普通に働く人の割合は6割、やる気のない人は2割」というもの。でもこれ、拡大解釈による誤解が本当に多い。

この記事はこんな人におすすめ
  • 人事異動する・させることを考えている人
  • 働きアリの法則を知りたい人
  • 働きアリの法則が正しいと思えない人

ども!過酷なパワハラ環境から自力で脱出した脱獄リーマンこと高岡遥也です!

「人を入れ替えても組織の生産性は変わらない」と主張している人がいる。サボっている人がいる事に「この人たちを辞めさせても、新たにサボる人が出てくる」と主張している人もいる。根拠は「働きアリの法則って知ってるか?」だったりする。こんな時、法則を曲解してしまっているなぁ、と感じる。

働きアリの法則とは?

エビデンスに乏しい法則の概要

まず「働きアリの法則」とは、ある組織の中で人が働く傾向は一定の割合であるとする考え方です「働きアリの法則」の一般的な見方は「働く人20/普通の人60/働かない人20」という割合を用いて説明されます。

これはしばしば「80/20の法則」や「パレートの法則」と類似して引用されることがありますが、具体的には、ある組織や集団において、これは全体の成果の大部分はごく少数の人々によって生み出されるというもので、視点が異なることを理解しよう。

実は、そもそもこの法則には科学的根拠がほとんどないと言われている。誰かの経験則を一般化しすぎている危険な議論だと感じる。

日本の生態学者・長谷川英祐(北海道大学)らの研究内容

研究者たちは、アリの巣でどのアリがどんな仕事をするかを調べました。そして、アリたちがそれぞれ自分の役割を持っていることがわかりました。アリの巣では、アリがたくさんいなくなったり、新しいアリが生まれたりします。
すると、働いていなかったアリが働き始めたり、逆に働いていたアリが休むようになったりしました。アリの巣では、うまく労働量のバランスを取りながら生活しています。

The mechanism underlying the regulation of work-related
behaviors in the monomorphic ant, Myrmica kotokui

この法則は2012年に日本の生態学者の方によって提唱されたと言われています。上記は「引用」としていますが、僕の方でわかりやすく序論をまとめてみたものです。一次ソースの論文はこちら(英語)です。

組織間の能力差を無視した間違った一般化

エビデンスについての現状

論文はあくまでアリに関するもの。人間社会において通用するなどとは書かれていない。どのようにこれが人間社会に当たり前に適用されると考えられたのだろうか。
特に注意した方がいいのは、

  • 「働き者かどうか」以外に
  • 「優秀か無能か」が重要

であること。少なくとも一次ソースによれば、「人間に対する効果」が裏付けられたものではないという点は抑えておこう。一次ソースしか無い中で人間にまで一般化して考えるのは思慮不足だろう。(もし別の研究で実証されたものがあれば是非お教えください。)

働きアリの法則は人間にとっても正しいかどうか

相対的なやる気

まずは「やる気」にフォーカスしてみよう。

やる気の面で、働き者、普通の人、怠け者が20-60-20で 組織が構成されているとしよう。働き者が20抜けても、新たに20-60-20の比率で分布し直す。これが働きアリの法則で言っている事だ。

人間における働き者、普通の人、怠け者の定義は何なのだろうか。100人いれば、パフォーマンスは1-100番までの順位がつくだろう。下から20人が抜けても、1-80番の順位がつく。上位20パーセント、中間60パーセント、下位20パーセントは、そのように分けさえすれば、いつでも存在する。相対的な評価ならば「常に20-60-20である」は成り立つに決まっている。成り立つというか、そのように区分けしているから当然。これでは法則ですら無い。

絶対的なやる気(サッカーチームに例えて)

じゃあまさか、「20-60-20」とは絶対的なパフォーマンスに対して言っているのだろうか?つまり上位層が抜けた場合、中間層が上位層の実力に成り上がるか?下位層が抜けた場合という事だけど。

「いやいや、下の20人が抜けたら、残った下の16人(80人✕20%)が働かなくなるという意味だよ」
と言いたい人もいるだろう。

サッカーの日本代表を想像してみよう。まず試合開始直後から11人が全力なはずだ。本当にやる気がなくて下位20パーセントに入ってしまうような奴は日本代表に選ばれないだろう。もうこの時点で破綻しているが、思考を進めるために仕方なく、仮に20-60-20の比率でやる気が分布しているとしよう。

2人退場になってしまったら、どうだろうか?20-60-20の法則が本当なら、9人の中に1-2人サボっている人がまた現れるらしい。実際はどうだろう、逆に9人の1人あたりのパフォーマンスを上げようと努力するはずだ。でないと、日本代表としての責任を果たせないし、次回ワールドカップでも選出されない。つまり少なくとも外的要因によって、簡単に崩されるような理論である。

絶対的なやる気(サラリーマンに例えて)

更にこれをサラリーマンに例えてみよう。11人のチームで全員がやる気のある優秀な社員を集めたプロジェクトを発足する。パフォーマンスは社内随一になるはずだ。逆に11人のチームで全員がやる気のない無能な社員を集めたプロジェクトを発足する。その中から、やる気のある者20%、普通の者60%が生まれるだろうか?環境も後押しして、100%の人間が成果が出ないに決まっている。

当然、11人でなくとも、上記の方向性は変わらないと誰にでもわかると思う。

人間に適用できる法則と言える程、確かな論理では無いのは明らかではないだろうか。(研究対象になったアリに関しては法則が当てはめられる、というのは理解していますよ。)

能力を考慮するともっとおかしな論理だと気づく

更に人間の評価には「能力」がつきものだ。具体的な例を考えてみよう。Googleにいる超優秀でスキルフルな働き者のプログラマーが会社をやめた。では、残った人たちが、超優秀でスキルフルであった働き者の埋め合わせが可能だろうか?努力なしではパフォーマンスが元に戻ることはないだろう。また当然、その辺に歩いている人にGoogleで働いてもらったとして、例えその人が頑張ろうとも、パフォーマンスは著しく下がるだろう。

結局、パフォーマンスを埋め合わせるには、元いた人と同等の努力や才能が必須だ。放っておいてパフォーマンスが戻るわけが無い。もちろん努力すれば、パフォーマンスは元に戻る可能性はある。でも、それってやっぱり法則じゃないよね。

人材入れ替えが組織を変革する理由と事例

組織間能力差の無視という問題点

「働きアリの法則」が見落としている重要な問題の一つは、組織自体の置かれた環境や、組織間の能力差を無視した一般化だ。僕たちはアリじゃあない。そもそもどの組織にも20-60-20のやる気が分布しているという前提がむちゃくちゃである。

実際に、同じ業界に属し、同じ規模であっても、組織ごとに生産性や収益力には大きな違いが存在します。それは個人の「やる気」「能力」の積み上げの側面が十二分にある訳です。この事実を認めずにすべての組織を一様に扱うことは、現実を見過ごした誤った一般化であると言えます。

優秀な人材と組織能力の関連

組織の能力は、そこで働く人々の質に大きく依存します。やる気に関しても、やる気を出さざるを得ない・やる気を出せば評価される環境におかれれば、20-60-20どころか、80-10-10にでもなる。逆も然りである。加えて、能力も異なる。優秀な人材が集まる組織と、平均的な能力の人材で構成される組織を同じ基準で評価することは、現実を無視した議論です。

つまり人材の「やる気」「能力」は組織の生産性やイノベーションの能力に直結し、人材を入れ替えるだけで組織のパフォーマンスは大きく変わり得ますし、それを維持できる環境を構築すれば自然にもとに戻る事などないはずです。

企業経営における人事の役割は極めて重要です。適切な人材配置や育成、評価体系は組織の競争力を左右するからです。人材の質と組織の成果は密接に関連しており、この法則がその点を考慮にいれていないことは、その適用において大きな盲点となっています。

働きアリの法則に捉われない生産性向上の方策

人材交代による組織変革の理由と事例

人材の交代が組織に大きな変革をもたらす理由は明白です。新しい人材が持ち込む新たな視点、スキル、経験が、組織の方針や文化を変え、それが組織全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすからです。実際に多くの事例が、この理論裏付けています。

日本の自動車メーカーにおける変革の事例

特に日本の自動車メーカーにおいては、経営トップの交代が業績に顕著な変動をもたらした例が散見されます。一人の卓越した経営者がトップに立つことで、リーダーシップのもと組織は大きく変貌を遂げることがあります。新しいトップの下で、明確なビジョンと戦略が打ち出され、組織は活性化し、生産性が向上するのです。

能力における経営者の影響

一方で、経営手腕に欠けるトップが就任した場合、影響は逆方向にも現れます。経営判断の失敗やビジョンの不明瞭さは、組織の士気を低下させ、最終的には優秀な人材の流出につながります。その結果、企業競争力は低下し、時には組織の存続すら危うくなることがあります。

まとめ

このように、組織の命運を左右するのは、そこで働く人々特にリーダーシップを取るトップの人材です。その能力とやる気が直接的に組織の運命決定づけるんです。明確なビジョンを持ち、組織適切に導くことができる人材がトップに立つことの重要性は、多くの実例を通して確認されています。

働きアリの法則は、経験に基づく曖昧な一般論に過ぎず、組織間の能力差を無視している点で大きな欠陥がある。優秀な人材の重要性を理解し、積極的に人材獲得・育成・定着に取り組むことこそが、生産性向上の鍵となるのである。この点を肝に命じ、人材マネジメントに尽力していこう。

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